首相 夫婦で外交デビューへ

野田佳彦首相は20日夜、ニューヨークでの国連総会に出席するため、政府専用機で羽田空港を出発した。訪米には首相選出後表舞台に出ることがなかった仁実(ひとみ)夫人も同行、夫婦そろっての外交デビューとなる。

 仁実夫人は潘基文国連事務総長夫人主催の行事に出席するほか、大震災支援に謝意を示すために開くレセプションで各国要人をもてなすホステス役も務める。

 仁実夫人は控えめなタイプ。出発に際しても促されてから首相の横に立って手を振った。鳩山由紀夫元首相、菅直人前首相の夫人は進んで前に出るタイプだったが、百八十度異なるファーストレディーとして、首相初の外国訪問を支える。

  

深刻さ増す普天間 存続現実味

米国を訪問中の玄葉光一郎外相は19日(日本時間20日)、クリントン米国務長官と会談し、米軍普天間飛行場(沖縄県宜野湾(ぎのわん)市)の同県名護市辺野古への移設を推進する方針を確認した。クリントン氏は「(移設の)早急な進展」を求めた。発足間もない野田政権だが、問題を先送りしないよう強く牽制(けんせい)したものだ。玄葉氏は具体的な道筋を示せなかった。県側が県外移設を主張しているためで、事態打開は容易でない。「普天間の固定化」が現実味を増してきている。

 民主党政権の外相は玄葉氏で4人目で、特にこの半年では3人目。日本の外相は会談のたびに就任あいさつを繰り返してきた。今回も玄葉氏は「日米合意を着実に進めたい」と語ったが、辺野古移設の日米合意の順守は、もはや「時候のあいさつ」と化している。

 米側の要求の背景には、いつまでも沖縄を説得できない日本側へのいらだちに加え、財政支出削減を訴える米議会の圧力もある。議会には「実現性が分からない普天間移設と海兵隊のグアム移転にカネを出す状況ではない」との雰囲気が広まりつつある。

 外務省幹部は「日本の決断を待つ余裕が米政府になくなりつつある」と指摘する。加えて頻繁な首相や外相の交代に、米側は「だれと話せばいいのか」と不信感を募らせている。

 辺野古移設で正式合意した6月の日米安全保障協議委員会(2プラス2)では、沖縄駐留米海兵隊の平成26年までのグアム移転完了を断念し、「できるだけ早い時期」とすることでも合意した。ゲーツ国防長官(当時)は直後の記者会見で「1年以内の進展」を日本側に要求。7月に就任したパネッタ国防長官は下院議員として長く予算や財政に携わり「コストカッター」と呼ばれた。決断を求める米側の圧力が今後一層強まることは必至だ。

 「圧力」は米側からだけではない。沖縄県の仲井真弘多知事は19日、ワシントンで講演し「移設先は日本の別の地域を探した方が断然早い」と強調した。

 「移設ができなければ普天間を継続するしかない」

 「ゆすり発言」をしたとして3月に更迭されたケビン・メア元国務省日本部長は18日、更迭後初めて沖縄を訪れてこう語った。

 「日米合意順守」の掛け声だけで済む時期は過ぎており、残された時間は少ない。(酒井充、ニューヨーク 黒沢潤)

  

知事側の要請記録 九電に存在

九州電力の「やらせメール」問題に絡み、今年5月の佐賀県幹部を対象にした原発に関する説明会のインターネット中継中に、同県の古川康知事側から賛成意見の書き込み要請を受けたことを示す九電内のメールやメモが存在することが、同社第三者委員会(郷原信郎委員長)の調査で新たに分かった。また九電の前副社長が事実上、やらせをする旨を事前に眞部利應社長に報告していたことも判明した。

【写真で見る】九州から北海道まで 電力各社のやらせ問題

 第三者委の弁護士チームが20日にまとめた調査報告書で明らかになった。知事はネット中継中の書き込み要請も含めすべての疑惑を否定しているが、第3のやらせ要請疑惑が浮上したことになる。

 説明会は5月17日にあり、原子力安全・保安院が古川知事ら県幹部に玄海原発(同県玄海町)の安全性に関して説明。ネット中継で視聴者が意見を書き込める仕組みだった。

 第三者委によると、説明会の途中、九電本店の課長級社員が川内原発(鹿児島県薩摩川内市)次長らに対し、「今しがた、知事事務所より『書き込みが反対派ばかりなので、九電も書き込みを行うように』との指示があったとのこと。ご協力お願いします」というメールを発信した記録が残っていた。実際に九電側から約10件の賛成意見が書き込まれた。「知事事務所」について、ある九電幹部は「佐賀県のことだ」と証言しているという。【福永方人、小原擁】

  

狙われた防衛産業 感染の手口

サイバー攻撃は日本を代表する防衛関連企業をターゲットにしていたことが明らかになってきた。国家の存立を担保する安全保障への脅威といえ、深刻だ。警視庁は他国のスパイ活動「サイバーインテリジェンス」の可能性もあるとみて攻撃元の特定を進める。

 「まさに相手陣内にスパイとなる味方を送り込むようなものだ」。サイバー犯罪に詳しいネットエージェント(東京)社長の杉浦隆幸氏は、今回の攻撃をこう分析する。手口はいずれも「標的型メール」によるもの。実在の会社幹部や社員を装って標的のパソコンにメールを送り、ウイルスを仕込んだ添付ファイルやURL(サイトのアドレス)を開かせ感染させる。

 杉浦氏によると、ウイルスに感染すると、第三者が外部からアクセスし、内部情報を抜き取れるほか、社内の様子を録画したり、盗聴したりできる。「スパイ」といわれるゆえんだ。添付ファイルを開封したり、URLをクリックしたりしなければ感染しないとされるが、膨大なメールを受信する中で、トラブルが起きないとも限らない。

 IHIの場合、社員教育とセキュリティーシステムの強化で怪しいメールの未開封を徹底していたため、感染せずに済んだが、防衛産業最大手の三菱重工は感染し防衛省から「機密情報を持つ会社として対策も対応も甘い」と指摘された。標的型メールは近年、企業だけでなく、防衛省や経済産業省など官庁にも仕掛けられており、手口がさらに巧妙化する恐れもある。